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制御盤はどのように設計される?発注前に知っておくべき基礎知識

屋外盤を取り扱う立場にあるなら、制御盤がどのようにして設計されるのかを知っておいて損はありません。ここでは、制御盤の設計についての情報を、設計の仕方や主要な部品、発注の流れなどのさまざまな側面から見ていきましょう。

制御盤の基本!制御設計・電気設計について

工場や工事現場などで使用されている工業機械や工作機械は、基本的に電力を機会に供給するための動力部と、機械の動作を制御する頭脳としての部分である制御部を有します。そして、これらの部分を取り扱うためには、電気に関する専門知識が必要不可欠です。

動力部の設計で決めることは、機械の回転数や負荷率制御を決めるためのインバータの設置や、動力の大きさや電源の規模に関わる電磁開閉器の負荷容量検討なども行います。

制御部の設計に関しては、機械部分を動かすためのシーケンス設計を行います。また、PLCを使用する場合は、機械を円滑に動かすための制御方法および制御装置の選定が非常に重要です。ほかにも、動力部の設計とセットで、インバータの運転指令や周波数設定なども決定します。

工業機械や工作機械は、さまざまな環境や場所で用いられます。その中には、砂や土、金属の削りカスなどの粉塵、洗浄水などの湿気、溶接などの高温といった負担の大きな環境も含まれます。そうした環境でも安全かつ確実に機械が動作できるように、制御盤筐体の耐環境性能の検討なども行うことがあります。

制御盤で使われる主な電気機器・部品

制御盤には、さまざまな電気機器や部品が使用されています。100%理解できなくても、おおむねどのような部品が使用されているかを知っていれば、制御盤の仕組みや設計を理解する入り口には十分。まずは制御盤がどのような部品で構成されているかを知りましょう。

ランプ

表示灯とも呼ばれます。主に、電源のオンオフなどといったような制御している機械の状態を表示するための部品です。運転中なら緑ランプ、停止中なら赤ランプといったように、表示している機械の状態はある程度統一されています。

トランス

変圧器とも呼ばれる部品で、交流電圧を別の交流電圧に変換する役割を持っています。たとえば、400Vや200Vといった三相電流を使用する機械のや部品の使用電圧に合わせた電圧に変換するためのパーツがこれです。また、感電による事故を防ぐために、高電圧を低電圧に変換するためにも使われます。

UPS

無停電電源装置とも呼ばれるパーツです。長期間に渡って運転し続けなければならない機械が、事故や災害による停電で停止してしまうことを防ぐ役目を持っています。これを使用することで、停電時にも電力の供給が継続されます。

電磁リレー

制御回路の中心となる部品です。ボタン類は操作するオペレーターが押すのに対し、電磁リレーは電磁力で接点を動作させます。形式や大きさによってさまざまな種類があり、機械の種類や用途によって使い分けられます。

電磁接触器

主に、モーターやヒーターなどの動作をオン・オフするためのスイッチとして使用される部品です。電磁接触器は、電源側と負荷側とのあいだに設置された接点を接触させたり話したりすることで、機械の動作をオンオフします。

インバータ

三相誘導電動機、つまりモーターの回転数を変えるための部品です。モーターの回転速度はそのままでは一定ですが、インバータを使うことで回転数を変化させることができます。インバータと同じような部品にコンバータがありますが、コンバータはインバータに組み込まれている別機能で、交流電流を直流電流に変換するというものです。

ブレーカー

一般家庭にも設置してあるので馴染みのある部品でしょう。もちろん工場や工事現場で使用されている機械にも設置されている一種の安全装置で、制御盤内の電源をオン・オフするという役目を持っています。

端子台

制御盤内部の機器と外部のさまざまな機器との接続部分で、制御盤と外部の設備を電線で電気的に接続するために欠かせません。どんな制御盤であっても、ほぼすべてのものに設置されている部品です。

電流計・電圧計

電流や電圧といった工作機械や作業機械にとって重要なデータを表示するためのインジケーターです。主に制御盤の扉に設置されており、モーターの電流や電圧を表示しています。

温度調節器

水や水槽を用いているときにとても重要な水温を調整するための調節器です。あらかじめ温度を設定しておき、水温その温度を常に保てるようにするために欠かせない装置です。

サーボアンプ

サーボモーターをコントロールするための指示を行う部品。エンコーダーなどに代表されるの位置検出器からの信号を読み込んで、目的の位置との差分を計算するのが主な機能です。しかし、制御盤においてはほかにもさまざまな機能や用途を持っています。

制御盤設計のポイント

負荷に合わせて適切にリレーを選ぶ

「大は小を兼ねる」との言葉があるように、一般的には小さいものより大きいものを選んだ方が効率の面はもちろんですが、後々も問題が起きにくいものです。

ただしリレーに関しては話が別です。制御用のリレーでは、大電流を流す場合と小電流を流す場合の求められる要件が異なることから、流す電流に合わせた適切なリレーを選ぶことが求められます。

大容量の負荷を開閉する場合、接点機構がダブルブレークのものにすると有効です。また、材料は伝導率の高いAg合金を使用するケースが一般的です。一方、微小負荷を開閉する場合にはシングル接点よりツイン接点が有効です。アークが小さいことから、接点材質は腐食に強いAuやAu合金の使用が適しています。

モーター故障への対策を行う

正確に制作しても、長年の使用で劣化するので故障リスクが高まり、やがては故障に至ります。

そのため、常に故障を考慮しておく必要があります。例えば故障した時の影響を最小限にとどめるために、重要な機器は事前に保護することが重要です。

特にモーターです。

モーターは電気エネルギーを機械エネルギーに変換するためのものです。モーターが故障することで、機械は動作しなくなってしまいます。

モーターの故障の原因は多々ありますが、欠相異常や反相(逆相)異常、過負荷、漏電といった原因が考えられます。

これらに対しては保護機器の使用がおすすめです。一般的にブレーカーやサーマルリレーを使用しますが、モーターの種類や稼働状況によっては、ブレーカーやサーマルリレーだけでは保護しきれないケースもあります。そこで逆相欠相リレーや内部の欠相を検出するモーターリレーを使用し、「いざ」に備えましょう。

制御盤の設計・発注に関して知っておくべきこと

制御盤の設計・発注に関しては、そのプロセスはもちろんのこと、納期をはじめとする各種情報もしっかり把握しておかなくてはいけません。

屋外盤・屋内盤の設計・発注の流れは?

屋外盤・屋内盤の設計・発注の流れは、まず問い合わせから始まります。そして要望や設計プランなどの簡単な話し合いをするための打ち合わせを経て、双方に問題がなければ見積もりを経て契約となります。

もちろん、選ぶ会社は屋内盤設計が可能な会社でなくてはいけません。屋内盤設計が可能な会社は、以下のリンクで詳細に紹介しています。

事前の打ち合わせや調査

どのような制御盤を制作するのかを決めるための打ち合わせ・事前調査を行います。制御盤は「どのように使うのか」が分からなければ適したものを設計できません。依頼者との認識のズレを生まないためにも、事前調査や打ち合わせを密に行いましょう。ここでポイントとなるのが、自社が何を求めるかです。

設計に関する作業内容は、自社が求める仕様によって異なります。また、作業の許可も自社から取得しなければなりません。制御盤をどこで使用するのかによっても異なります。屋外なのか屋内なのかなど、自社から細かい部分まで聞き取ることで、自社のニーズにマッチした制御盤の形が見えてくるでしょう。

設計を開始

製作仕様書に基いて設計を行います。制御盤製作のために必要な電気機器や盤の大きさ、電気機器の配置を考えながら、まずは2Dにて盤内配置図が作成されます。また、ハード側だけではなく制御フロー、ソフト面での設計も重要となるポイントです。

CADによって異なる部分もありますが、過去の図面を参考にすると、比較的スムーズに設計が進められるでしょう。一方で、部品を間違えてしまうミスが起こるかもしれません。そのため、設計図の確認をする際は型番まで確認しましょう。

製作

完成した設計図に基いて製作が開始されます。図面に沿って電気機器や配線を配置。製作過程の中で別途購入しなければならない機器もあるようなら、納期に影響がでないよう事前に担当者と話し合っておきましょう。部品が手に入らない場合、設計から考え直す必要性があります。

代替品があったとしても、求めていた部品と同じサイズとは限らないことにも要注意です。全く同じサイズの代替品であれば設計変更の必要性はありませんが、サイズが異なる場合、取り付けられたとしてもほかの部品に干渉してしまう可能性があります。

問題がないか確認

制御盤の製作が終了したら試運転です。動くか・動かないかはもちろんですが、「自社の要望通りに動くのか」が大切です。トラブルの有無も含め、納入前までに検査が行わます。

問題がなければ納品に進みますが、問題が確認された場合には修正のため納品時期に影響が出ることもあるでしょう。ブレーアーやスイッチ、リレー等、ハード配線でわかるケースがあります。電源を入れて確認されるときもありますが、いずれにせよ納入する前にしっかりとテストしてくれるメーカーに依頼しましょう。

取付工事後も試運転を行う

自社に納入後、取り付け工事となります。配線工事が必要なケースもあるでしょう。制御盤の取り付け修了後、もう一度試運転を行います。実際に機器に搭載すると、機器とのやり取りや相性の問題もありますので、事前の試運転通りに動くとは限りません。納入前の試運転の時にはまったく見受けられなかったトラブルが発生する可能性もありますので、現地で試運転し、結果を見守りましょう。

もしも試運転で何らかの問題が発生してしまった場合には、修正が行われます。修正した部分は他の方も確認・記録できるようにしましょう。その場で急に修正するケースもありますが、記録がないと「何が悪かったのか」が分からないままとなってしまいます。

制御盤の納期はどれくらい?

制御盤の規模や現場の状況にも左右されますが、たとえば高さ:2,000mm 横幅:600mm 奥行:300mmの自立盤で、内部構造が内部制御機器がブレーカ等、冷却機器付といった仕様であれば、設計から出荷まで約1ヶ月となります。※1

また、板金加工と電機制御エンジニアリング、ソフトとハードの設計・製作の対応などが可能な現場であれば、より効率的な作業ができるので、同規模のシステムであればこれより短い期間で納品できる可能性もあります。

保護等級(IP)とは?発注時はどのIPにするべき?

制御盤には、保護等級(IP)と呼ばれる等級が設定されています。IP規格は盤の防塵・防水を証明するためのもので、国内のみならず海外でも使用されている規格です。

分電盤や配電盤は、屋内や屋外をはじめとしてさまざまな場所に設置されているので、その環境的な負荷もまた違ってきます。そのため、より過酷な環境に置かれる制御盤ほど、レベルの高いIP等級を求められるのです。屋内盤であればIP43以上、屋外盤であればIP44以上のIP等級があれば、環境負荷に耐えて正常に動作できると期待していいでしょう。※2

スペースのない場所に制御盤を設置するには?

いざ制御盤を設置しようと思っても、十分なスペースが確保できないこともあるでしょう。特に、制御盤を置くスペースはあっても、実際に設置したら扉を開けるためのスペースのことを忘れていた、といったケースも見られます。その際に導入できるのが扉外し式の屋外版です。

制御盤が収められている箱に蝶番付きの蓋がないタイプであり、扉は蝶番の代わりにマグネットや金具で固定する方式となっています。扉を筐体から取り外せるので、通常は扉を開け締めするためのスペースを確保しなくてはいけないところでも制御盤を設置しやすくなるのです。

屋外盤設置に関して注意するべきことは?

屋外盤を設置する際には、防水性能試験を行うことが大切です。屋内に設置した制御盤は、常に雨風にさらされることになります。特に水分は電子機器の大敵なので、設置前にかならず防水性能試験を行う必要があります。

また、設置環境によっては水分以外にも気をつけなくてはいけないポイントはたくさんあります。例えば、海の近くなら潮風によるサビや劣化に耐えられるかどうか、寒冷地なら寒さに、暑さが厳しい場所なら熱に耐えられるかどうかなどが重要です。

ほかにも、制御盤から出る騒音が近隣住民の迷惑にならないかどうかという防音性能試験もやっておくべきでしょう。

制御盤設計に欠かせないPLC

PLCは工場環境に対応したコンピューターで制御デバイスです。シーケンサとも呼ばれています。リレー回路による電気制御を、デジタル的に代替するために開発されました。PLCが一台あれば、複数のモータ、センサ、コンベア、ロボットなど多種多様なデバイスを同時制御できます。

工場にある装置の多くはPLCによる制御です。電子機器の制御だけなら、組み込みボードはありますが、PLCは制御デバイスとしてのメリットが多いため採用されることが多いです。

工場の環境は機器にとって好ましい状態とはいえません。環境への耐性や堅牢性、保守の難易度、処理速度や信頼性、応答確実性やプログラムが容易などさまざまな要素が求められます。

PLCは産業用機器に求められる機能に特化し、高い堅牢性や信頼性や保守性が特徴です。回路変更はできないものの、組み込みボードはユーザーが自由にプログラムできる柔軟性もあって、比較的簡単に組み替えられます。

PLCの種類

PLCは2種類あります。「パッケージタイプPLC」「ブロックタイプPLC」です。パッケージタイプは基本的な機能を統合したタイプで、ブロックタイプは必要に応じてユニットを追加できます。

リーズナブルな価格設定はパッケージタイプですが、拡張性や性能を見るとブロックタイプです。PLCは国内外の複数メーカーが取り扱っています。価格に比例してスペックは高くなりますが、ハードウェア自体の差はほとんどありません。ただし、メーカー、プログラミングソフトウェア、外部デバイスへの対応力や相性が異なる点は注意が必要です。

制御盤の規格

制御盤には国際規格があります。基本は、IEC 61439やUL508Aなどです。IECは国際電気標準会議が定めた国際統一規格で、IEC 61439はIEC 60349の後継にあたります。低電圧開閉装置と、制御装置規定した規格です。他に、IEC 62208という規格もあり、低電圧開閉装置と制御装置アセンブリのキャビネットを規定し、制御盤の空の筐体を対象としています。

UL規格は、ULが策定する民間規格で、製品の安全性に関連しているものです。ただ、米国向けの電気製品における認証取得では、必須の主要規格になっています。UL508Aは、産業用制御盤を定めているものです。

防水、防塵性能を等級で表すIPコードは、IEC 60529、衝撃に対する保護等級を表すIKコードは、IEC 62262が基になっています。IECもULも、準拠している、あるいは基にした試験やテストに合格した筐体は、国際的な安全性や信頼性が認められたものとして評価できるのです。つまり制御盤の選定では重要な基準になります。

今後の制御盤設計の効率化を行うためのポイント

制御盤の制作は一度で終了するものではないはずです。以降も継続して制作することになるはずなので、効率化を意識することが求められます。

設計資料の標準化を目指す

設計資料を標準化することで、誰もが設計資料を見て取り組める環境を構築しましょう。特定の人間のみが理解できる設計資料では、常にその人間を頼らなければなりません。しかし誰が見ても理解・設計が行えるよう資料を標準化することで特定の人間だけに頼らない制御盤の制作環境を実現します。また、標準化することでより多くの人間に見てもらえるため、さらなる効率化のアイディアが出てくる可能性もあります。

JISや国際標準に合わせて図面を書く

設計書にもJISや国際標準が用意されています。それらに合わせることで、だれが見ても理解できる図面となります。担当者のスキルに頼った図面では、担当者は理解できますがその他の人間は図面を見ただけでは分かりません。また、制作だけではなく、完成した後にトラブルが起きた際、図面製作者以外が分からない状況を作りかねません。

JISや国際標準に合わせた図面であれば、だれが見ても図面を理解できると共に、制作後にトラブルが起きた場合も図面を見てどこに問題があるのかを確認できるので、作業の効率化に繋がります

オーダーメイドで依頼もできる

制御盤の設計や取り扱っているメーカーは国内にもたくさんあります。それぞれ屋内、屋外が得意などの強み、実績や歴史も異なっているのです。ただ、自社に適している、求めている機能、特殊性がある制御盤を取り扱うメーカーを見つけるは苦労します。

その場合、オーダーメイドの設計に対応してくれる業者もあるため、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。オーダーメイドなら自社に適した制御盤を手に入れられます。相談すると、きっと力になってくれるでしょう。